1年ほど前に引っ越してきた家は、えらい坂の上にあります。「すごい坂」とか「急な坂」とも言えますが、ぴったりくる言葉としては「えらい坂」。初めて内覧に来たときに、地面が自分の方にせりあがってきているかのように思え、思わず口について出たのが「えらい坂だね、こりゃ。」という言葉でした。でも、間取りや立地は条件にぴったりで、雰囲気も好ましかったので、それまで2年近く家を探していた私たちは現在の家に住むことにしました。引っ越し後、近所にご挨拶に伺ったとき、「ここは坂だけがね、あれですけど、いいところですよ。」とやっぱり話題は坂のことでした。
帰宅するときはその急坂を上っていくわけですが、平らな道を歩いているのとは違う気持ちが生じます。同じ坂道を歩いている人に対して、ただの通行人とは違う親近感を覚えるのです。夕方早い時間に仕事帰り風の人などを見かけると、根拠もなく実直そうだなぁなどと思えてきます。また夕飯時に坂の上から下ってくる家族などには、これから食事にでもでかけるのかな、帰りは上りだけど楽しそうだからいいのかな、などと勝手に想像しています。
もう一つ、気づいたことがありました。「坂の上に住んでいるんですよ。」と話すと、時折「私も坂の上に住んでいるんです。」という人に出会います。その時に、なぜかちょっといい雰囲気になります。それがうれしくて面白い。単なる地面の傾斜についてでも、誰かと共感し合う感じって何かいいものなのかもしれません。でも、次に住む場所は平らな場所がいいかなぁ。
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