10月24日から2泊3日でふらの女性サミットに参加してきました。
ふらの女性サミットは「複雑な現代社会を果敢に泳ぎぬく女性を応援する」をテーマに、北海道富良野エリアで開催される女性リーダーの集う場です。主催はNPO法人エフ・コレクティブ。昨年に続き2回目の開催でした。
1日目
全国から集まった女性たちがまず到着したのは、富良野演劇工場。『北の国から』で知られる作家の倉本聰さんが建設に関わり、その運営は全国認証第一号の特定非営利活動(NPO)法人「ふらの演劇工房」が担っています。そこでNPO法人エフ・コレクティブ代表理事の小嶋美代子氏からFのつく前向きな言葉を16個プレゼントされて、サミットがスタートしました(私が印象に残ったのはfearless)。
続いて全員が劇場のステージに上がって、オープニングプログラムがスタート。体を動かすゲーム性の高い内容で何度も大笑い。一気に参加者同士の距離が縮まる中、身体が発するメッセージの大切さ、相手のことを考えた言動などコミュニケーションについて学びました。
夜は交流パーティ。初対面の人ともすぐに話が弾み、にぎやかな交流の場となりました。あっという間に大量の名刺を交換。1人で2枚、3枚の名刺を持つ人も複数いました。
2日目
2日目、希望者は早朝5:30から「バウムクーヘンのHASEGAWA」でバウムクーヘン作りに参加。もともとバウムクーヘンオーブンの製造販売をしていた長谷川さんが、東日本大震災を機に中富良野に移住しバウムクーヘン作りを始めたお店です。長谷川さんご夫妻は、参加者に手順を教えてくれるときも、お互いに話すときも口調が優しい。参加者は一人一人回転する芯棒に生地をかけて、バウムクーヘンの1層を作りました。
朝食後は株式会社ポーラの佐藤幸子氏による「ウェルビーイング講座」。まずは二人一組になって相手の手をさすったりプッシュしたり。ハンドクリームの香りと人の手のぬくもりに癒されます。次に価値観ワークとペアインタビューで自分の大切にしている価値観を掘り下げていきました。改めて聞かれると、自分が大事にしていることや人から言われたことを思い出し、自然と自分自身をいたわってあげたくなるような気持ちになりました。
その後、「ドメーヌ・レゾン」に移動。こちらのコンセプトは「やぎと”つくる”ワイナリー」。一目で大切に飼育されているとわかるヤギがたくさん放牧されています。ドメーヌ・レゾンの建物の中でJT生命誌研究館名誉会長の中村桂子氏の講演『私たち生きものの中の私として生きる』を聴講しました。人間は生きもの、人間は自然の一部、生きものはすべて祖先は一つだった、というお話を聞いて、40億年前から続く私たち生きものの命について考えると、時間軸をぐわんと広げられるような気がしました。中村先生は詩を読んでいるかのような静かで心地よい語り口で、競争意識がない、権力に近づかない、時間に追われない、というご自身の生き方も教えてくださいました。講演の終盤、ご自身の経験から戦争の反対語は平和ではなく「日常」であり、日常を大切にしていると出会いがあるとのお話をされました。
中村さんの講演を受けて、午後は「本幸ラボ」に移動し中村さんからの問いを受けてのワークショップ。「自分が生きものだと感じたとき」「戦争について」など、グループごとに日常会話ではなかなかできない話を深めました。
夕食後は「男性リーダー鼎談」。登壇者はファザーリングジャパン理事 川島高之氏、大阪教育大学教授 小崎恭弘氏、中富良野町長 小松田清氏の3人。やりたいことをやること、理想を追い求めること、自分で選ぶこと、現実と相手を見て実利をとること、小さいことを積み重ねることなど、社会を生きていく上で三氏が感じたこと、行ってきたことなどを共有してくれました。
ぐっと現実社会に引き戻された感を持って盛りだくさんの2日目は終了。
3日目
希望者は6:00から北星山天空テラスで雲海見学のプログラム。あいにく気象条件が整わず雲海は臨めませんでしたが、清々しい空気と雲の間からのぞく太陽を見て富良野の朝を満喫。その後、ONE・GLOCAL代表取締役 鎌田由美子氏、京都精華大学特任准教授 山田亜紀子氏の講演を聴講。鎌田氏はJR東日本、山田氏は朝日新聞社とそれぞれ大企業のメインストリームではない部門で新規事業を立ち上げた後、やりたいことを見つけてキャリアチェンジした経歴をお持ちでした。お二人とも華やかなプロフィールですが、仕事のエピソードは意外にも始発から終電まで駅に立ってみる、一人一人口説き落とす、など地味で粘り強いものだったことが印象的でした。
解放そしてパワーチャージ
富良野の空は広く、道はまっすぐ続き遠くまで見通せる。富良野の環境だからこそ、日常から解放された感覚を強く持つことができました。そして、中村氏の講演で生きものや命という普段見失っている視点を獲得し、感性をゆさぶられたままその後のプログラムにも参加していたような気がします。登壇者それぞれが過ごしてきた時間の中で、時にマイノリティでありながら、地道な努力を続け、自分で考えてキャリアチェンジをしていたことも印象的でした。
盛りだくさんのプログラムを終えて、私は40億年前から続いてきた生命体である命を大切に燃やしているだろうか、いつかは別れの来る家族や周りの人たちをもっと大切にできるのではないか、と考えさせられました。そして、パワーと魅力あふれるたくさんの女性(お子さんやお母さまを連れて参加されている人も!)から刺激を受けて、パワーチャージできました。
今、私は日常に戻っています。ふらの女性サミットで感じたことを胸に、日常を少しでも良い方向に変えていきたいと思っています。